お母さんごめんなさい 演奏中 Off 

清水脩 詩

母さんは誠と心の中で呼んだだけで、もう胸が苦しく、悲しみに押しつぶされそうです。
大学の卒業を眼の前にして、就職も決ったというのに、誠は逝ってしまった。
悪夢なら醒めることもありましょう。
”お母さん、只今!”という元気な声が、今にも戸口から聞えてくるようです。
お嫁さんや結婚式場のことまで想像して、母さんの胸は幸福にふくらんでいました。
だのに、だのに・・・・・・

十二時二十五分。依然吹雪はげし。この吹雪は永くはつづくまい。
明日はよくなろう。寒い。がまんが大切。
シラーフもシラーフ・カバーもぬれている。下半身ぬれて苦しい。
十五時十五分。吹雪おとろえず。視界きかず。なぜ一人で無理をしたのか。
下半身凍って動かない−−−−お母さんのことを思うとどうしても帰りたい。

お母さん ごめんなさい
やさしいお母さん ごめんなさい
ゆたか、やすし、順子よ、すまぬ。
お母さんをたのむ。

手の指、凍傷で思うことの千分の一も書けず。
全身ふるえ。ねむい。

お母さん ごめんなさい
やさしいお母さん ごめんなさい
さきに死ぬのを許して下さい。

山でうぬぼれず、つねに自重すること。

お母さん ごめんなさい
やさしいお母さん ごめんなさい