山の歌 演奏中 Off 

清水脩 詩

山よ お前の ふところは
山の男のふるさとよ
うれしい時は山へ行く
さびしくなれば尾根歩き

山よ お前は 愉しそう
ピークで叫ぶヤッホーを
忘れずすぐにこだまして
山の仲間と呼びかわす

山よ お前の あで姿
岩場、草つき、雪渓も
みんなお前の肌の色
抱いてもみたい肌ざわり

山よ お前は もの言わぬ
けれど代りにぼくたちが
明日はいよいよアタックと
ヒュッテの便りしておこう

山よ お前が 隠しても
歯をむくようなガレ場なら
それがお前のしぶい顔
雪崩が残した爪の跡

山よ お前の 優しさは
テラスの空の星のように
テントの窓からしのびこむ
小屋の窓から降ってくる

山よ お前の きびしさは
霧と雨との捲き返し
風と吹雪のうなり声
おそう白魔の大雪崩

山よ お前よ さようなら
たき火の煙 消えないで
林をぬけて頂上へ
別れの言葉 告げてくれ

山よ お前よ いつまでも
ぼくはお前を忘れまい
お前もぼくを忘れずに
お前もぼくを忘れずに


 誠! 誠!
 母さんの手のひらにしっかりと握っているのは、いつもお前が山へ持ってゆくお前の手帳です。
お前の手垢でよごれ、お前の体臭がしみこみ、アルプスの雪にぬれてぼろぼろになったお前の手帳です。
右肩上りの、少しばかり乱暴な字。